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検査技術著者: 天野 開翔

CBD製品のΔ9-THC変性リスクを減らす4段階のポイント

CBD製品のΔ9-THC変性リスクを減らす4段階のポイント

この記事の要点

  • COAは、CBD製品を販売するための大切な第一歩です。最初から分析の専門知識をすべて身につける必要はありません。
  • 品質管理は、原料受入れ、製造、サンプリング、保管の4段階で考えると整理しやすくなります。
  • COAは、結果の数字だけでなく、分析日、バッチ・ロット番号、分析方法、LOD・LOQまで見ることが大切です。
  • 想定外のΔ9-THCが検出されても、すぐに原因を決めつける必要はありません。ロット、工程、採取方法、分析条件を順番に確認します。
  • KCAラボジャパンでは、検査結果だけでなく、その結果が出た背景まで一緒に確認します。検査項目が分からない段階からご相談いただけます。

オンラインウェビナーでお話ししたこと

2026年7月28日、Asabis株式会社が運営するCBD部の主催で、「CBDはなぜTHCに変わるのか、そして食い止められるのか 〜カンナビノイドの安定性をめぐる科学の最前線〜」というオンラインウェビナーが開催されました。

KCAラボからは天野開翔(本記事の筆者)が「検査機関の視点から見た品質管理のポイント」をテーマに登壇しました。協賛企業・登壇企業の1社であるGreen Trade Japan株式会社からは、「CBDからTHCへの変換を抑える添加剤『Stable-C®』の新規開発」と「CBN・THC非含有ブロードスペクトラム製品の開発」について紹介されました。

当日いちばんお伝えしたかったのは、検査結果は検査室の中だけで決まるものではない、ということです。どの原料を使ったのか、どのように製造したのか、どこからサンプルを採ったのか、検査後にどう保管したのか。こうした前後の流れが、最後の分析結果につながっています。

ウェビナーに参加できなかった方にも内容が伝わるように、本記事では天野の講演部分を中心に、できるだけ分かりやすく整理します。

COAは販売を始めるための第一歩です

COAとは、検体を分析した結果をまとめた成分分析書です。

COAの基本的な読み方は、COA(成分分析書)とはでも詳しく解説しています。

これからCBD製品の販売を始めようとすると、COA、LOD、LOQ、残留限度値など、聞き慣れない言葉が一度に出てきます。最初は難しく感じて当然です。すべてを自分だけで判断できるようになってから検査を依頼する必要はありません。

まずは、販売したい製品についてCOAを取得し、何が含まれているのかを確認する。ここが品質管理のスタートです。検査項目や製品区分が分からなければ、その段階から検査機関へご相談いただいて問題ありません。

日本では、製品区分ごとにΔ9-THCの残留限度値が定められています。厚生労働省の案内では、限度値を超える量のΔ9-THCを含む製品等は、麻薬及び向精神薬取締法上の「麻薬」に該当します。

製品区分Δ9-THC残留限度値主な製品例
油脂・粉末10ppmCBDオイル、CBDパウダー
水溶液0.1ppmCBD飲料
その他1ppmグミ、カプセル、ベイプリキッドなど

とくに水溶液の0.1ppmや、その他製品の1ppmは、とても低い濃度です。そのため、完成品を一度検査するだけではなく、原料の選定から保管までを一つの流れとして考える必要があります。

品質管理は4段階で考えると分かりやすくなります

カンナビノイド製品の品質管理を原料受入れ、製造、サンプリング、保管の4段階に分けた図

講演では、品質管理を次の4段階に分けて説明しました。

段階まず確認すること残しておきたい記録
1. 原料受入れCOAと届いた原料が対応しているか供給元、分析日、バッチ・ロット番号、分析結果
2. 製造配合や工程が成分へ影響していないか原料ロット、配合、温度、時間、使用器具、製造日
3. サンプリング検体がロット全体を代表しているか均一化方法、採取位置、採取量、採取者、使用器具
4. 保管保管中の変化や取り違えを防げているか容器、遮光、温度、湿度、保管期間、再検査日

最初から完璧な管理表を作る必要はありません。まずは原料のロット番号とCOAをひも付け、製造日とサンプルの採取方法を記録するところから始めるだけでも、想定外の結果が出たときの確認がずっとしやすくなります。

1. 原料受入れでは、COAとロットを確認します

原料供給者からCOAを受け取ったとき、Δ9-THCがNDと書かれているかだけを見て終わりにしてしまうことがあります。しかし、同じくらい大切なのが、そのCOAが目の前の原料を本当に示しているかどうかです。

少なくとも、次の項目を確認してみてください。

  • 分析日またはCOA発行日が古すぎないか確認します。
  • 購入した原料とCOAのバッチ・ロット番号が一致しているか確認します。
  • CBD、Δ9-THC、Δ9-THCAなど、必要な成分が分析されているか確認します。
  • 分析方法と検出限界(LOD)・定量限界(LOQ)が目的に合っているか確認します。
  • 発行元のウェブサイトやQRコード等から、COAの原本を確認できるか見ておきます。

「供給者からCOAをもらった」というだけでは、届いた原料と書類の対応関係までは分かりません。受入れ時にロット番号とCOAをセットで保管しておくと、後から迷わず確認できます。

厚生労働省のCBD関連製品の輸入手引きでも、輸入事前確認に使用する成分分析書には、成分一覧、製品形状、分析日、ロットを特定できる番号、分析方法、LOD等の記載が求められています。

2. 製造工程では、原料、温度、時間、器具を記録します

原料のCOAに問題がなくても、完成した製品の組成が原料とまったく同じになるとは限りません。複数の原料を混ぜ、加熱し、別の容器へ移し、充填するまでには、いくつもの確認ポイントがあります。

研究では、CBDが特定の酸触媒条件や高温条件でTHC類へ変化することが報告されています。ただし、一般的な製造・保管環境でどの程度起こるかは、温度、時間、溶媒、共存成分などによって変わります。最終製品からΔ9-THCが検出されたからといって、すぐに「CBDが変化したことが原因」と決めることはできません。

だからこそ、推測する前に次の記録を見ます。

  • 使用した原料の名称、供給元、バッチ・ロット番号を確認します。
  • 配合割合と投入した順番を確認します。
  • 加熱した温度と時間を確認します。
  • 撹拌、充填、移し替えに使った器具を確認します。
  • 同じ設備で前後に製造した製品を確認します。
  • 製造日と製造担当者を確認します。

原料の詰め替え、撹拌、充填、検査用サンプルの採取では、ごく微量の交差汚染が起こることもあります。日本の残留限度値は低いため、洗浄した器具を再利用するのか、使い捨て器具やロット専用器具を使うのかも、製品に合わせて決めておくと安心です。

3. サンプリングでは、ロット全体を代表する検体を作ります

検査機関が実際に測定できるのは、送られてきた検体です。分析機器が正確に測っていても、その検体がロット全体を代表していなければ、製品全体の状態とはずれた結果になる可能性があります。

たとえば、粘性の高い液体では、容器の上部と下部で成分濃度に偏りが出ることがあります。固形製品や植物原料でも、採取した位置や個体によって数値が変わる場合があります。

サンプリング前には、製品に合った方法で十分に均一化します。必要に応じて上部、中部、下部など複数箇所から採取し、混ぜて代表試料にする方法や、それぞれを分けて検査する方法を選びます。

ここは、事業者の方が最も迷いやすい部分の一つです。どのように採ればよいか分からなければ、サンプルを送る前に検査機関へ相談してください。採取方法を先に決めておくことで、検査をやり直すリスクを減らせます。

4. 保管では、光、熱、湿度、時間を意識します

COAは、分析した時点の検体を示すものです。検査後も、光、熱、酸素、水分、時間の影響によって、カンナビノイドの組成や製品の状態が変わる可能性があります。

一般的には、次の点を確認します。

  • 直射日光や紫外線を避けます。
  • 高温や大きな温度変化を避けます。
  • 容器を密閉し、水分や外気の影響を抑えます。
  • ロット番号と保管開始日を表示します。
  • 長期保管品や、決めた保管条件から外れた製品の再検査基準を決めます。

ただし、冷蔵や冷凍がすべての製品に適しているわけではありません。結露や成分の析出が起こる製品もあるため、容器や製品の性状に合わせて保管条件を決めます。

検査結果をどう読み、どう対応するか

日本のΔ9-THC基準は、とても厳しい水準です

ウェビナーでは、現在の制度を試験の合格点にたとえてお話ししました。

試験範囲をきちんと勉強し、できる対策を重ねていても、合格ラインが90点であれば89点は基準に届きません。日本の残留限度値、とくに0.1ppmや1ppmの領域では、ほんのわずかな違いでも、残留限度値との照合結果が分かれることがあります。

数値の大きさだけを見ると、米国でヘンプを区分する際の基準である0.3%(3,000ppm)に対して、日本の残留限度値は製品区分により300分の1から30,000分の1です。ただし、米国の値は植物等を乾燥重量基準で区分するための値であり、日本の最終製品に対する残留限度値とは対象と目的が異なります。したがって、単純に倍率だけで制度の厳しさを比較することはできません。それでも、日本ではサブppmから10ppmの領域を管理する必要がある点は、事業者にとって重要です。

この厳しさには、安全を守るための意味があります。一方で、残留限度値の近くにある結果を扱うときは、数値だけを見るのではなく、検体の均一性、採取方法、分析感度、測定の不確かさまで含めて考える必要があります。

KCAラボは、現行の残留限度値に沿った確認を前提としています。そのうえで、境界付近の結果を科学的にどう評価するか、事業者にとって再現性のある運用をどう作るかについては、今後も検証と議論が必要だと考えています。

想定外のΔ9-THCが検出されても、そこで終わりではありません

想定外のΔ9-THC検査結果が出た際に、対象ロットを保留し、記録、サンプル、分析条件を確認する流れ

「原料COAではΔ9-THCがNDだったのに、完成品から検出された」というご相談は珍しくありません。この場合、原因を一つに決めつけず、次の順番で確認します。

  1. 対象ロットの販売や出荷をいったん保留し、確認対象を固定します。
  2. 原料COA、バッチ・ロット番号、製造記録、保管記録を照合します。
  3. サンプルを十分に均一化したか、採取位置に偏りがなかったか確認します。
  4. 採取や製造に使った器具の共用と洗浄記録を確認します。
  5. 原料COAと完成品COAの分析機関、分析方法、LOD・LOQを比較します。
  6. 検査機関へ記録を共有し、再サンプリングや追加検査が必要か相談します。

異なる検査機関のCOAを比べるときは、分析対象、感度、分析方法が同じとは限らないことにも注意が必要です。NDは「その成分が絶対にゼロ」という意味ではありません。その方法のLOD以上では検出されなかった、という結果です。より高感度な方法で測ったことで、それまでNDだった微量成分が見えることもあります。

KCAラボは、結果の数字だけでなく背景まで確認します

COAに書かれた一つの数値を出すまでには、検体の前処理、成分の分離、検出、定量という複数の工程があります。製品の種類によっては、油脂、糖、色素、香料などが分析へ影響するマトリックス効果や、目的成分の回収率、近い構造を持つ成分との分離も確認しなければなりません。

KCAラボでは、結果に疑問がある場合、単に「検出された」「検出されなかった」で終わらせず、次のような点を切り分けて考えます。

  • その製品区分の残留限度値に対して、LOD・LOQが十分に低いか確認します。
  • Δ9-THCと近い成分を適切に分離して測定できているか確認します。
  • 製品のマトリックスが回収率や定量へ影響していないか確認します。
  • 検体がロット全体を代表しているか確認します。
  • 原料、製造、保管の記録と分析結果がつながっているか確認します。
  • 再検査をするなら、何を確かめるための再検査なのかを整理します。

厚生労働省が例示する分析法でも、LC-MS/MSまたはLC-QTOF MSによる定量法が示され、残留限度値の一桁下まで定量性を担保することが推奨されています。また、製品ごとの回収率、妨害ピーク、マトリックス効果を考慮し、必要に応じて分析条件を最適化することが示されています。

検査機関を選ぶときは、価格や納期だけでなく、想定外の結果が出たあとに一緒に原因を整理できるかという点も確認してみてください。比較する際の詳しい基準は、CBD検査機関の選び方でも解説しています。

検査機関を選ぶときの確認ポイント

日本向けのCBD製品を検査する場合は、次の点を確認すると比較しやすくなります。

確認ポイント確認する理由
厚生労働省が公表する関連リストへの掲載日本向けの輸入手続きや残留限度値確認に対応できるかを見るため
ISO/IEC 17025認定と認定範囲試験所の品質管理体制と、認定対象の試験を確認するため
製品区分に適したLOD・LOQ0.1ppm、1ppm、10ppmの残留限度値を評価できる感度が必要なため
分析対象と分析機器Δ9-THCだけでなく、目的とするカンナビノイドや規制成分を確認するため
COAの原本確認機能改変や別ロットの書類との取り違えを防ぐため
結果後の相談体制再サンプリングや追加検査の目的を一緒に整理するため

検査の相談・依頼

何を検査すればよいか分からなくても、ご相談ください

検査は、完成品を一度測って終わる作業ではありません。原料COA、製造記録、代表性のあるサンプル、保管記録をつなげることで、結果を次の製造や品質改善に活用できます。

KCAラボジャパンでは、天然由来・ヘンプ由来製品のカンナビノイド分析に加え、規制カンナビノイド、農薬、重金属、残留溶媒、微生物等の汚染物質検査をご案内しています。検査結果はCOAとして発行し、結果の見方や、その後に何を確認すべきかについても日本語でサポートします。

KCAラボの認定・登録や分析体制については、KCAラボについてでもご確認いただけます。

「製品区分が分からない」「どの検査プランを選べばよいか分からない」「まだ製品化の途中なので、まず相談だけしたい」という段階からご相談いただけます。

検査依頼フォームには、「不明なので提案してほしい」を選べる項目があります。分かる範囲でサンプル情報、バッチ・ロット番号、製品形状をご入力ください。内容を確認したうえで、担当者から検査内容、お見積もり、サンプルの発送方法をご案内します。

COAの取得は、安心して販売を始めるための第一歩です。分からないことを抱えたまま進めるのではなく、まずはお気軽にご相談ください。

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出典・参考資料

最終更新日: 2026-08-24

よくある質問

原料のCOAがあれば、完成品の検査は不要ですか?

原料COAは、記載された原料ロットを分析した時点の結果です。配合、製造、サンプリング、保管を経た完成品の状態を、そのまま証明するものではありません。実際に販売する製品ロットから、代表性のある検体を採取して確認することが大切です。

COAにNDと書かれていれば、Δ9-THCはゼロですか?

いいえ。NDは、その分析方法の検出限界以上では検出されなかったことを示します。LODが異なる方法では結果の表記が変わる可能性があるため、NDの文字だけでなく、LOD・LOQと分析方法も確認してください。

同じロットなのに、検査結果が違うのはなぜですか?

製品の不均一性、採取位置、採取器具、検体の保管状態、分析方法や感度の違いなどが考えられます。まずはロットと記録を照合し、検体が製品全体を代表する方法で採られているか確認します。

Δ9-THCが検出されたら、すぐに再検査すべきですか?

同じ方法のまま再検査を繰り返す前に、対象ロットを保留し、原料、製造、採取、保管、分析条件を確認してください。そのうえで、何を確かめるための再検査なのかを検査機関と決めると、原因の確認につながりやすくなります。

まだ製品化の途中ですが、KCAラボジャパンへ相談できますか?

はい。原料を選んでいる段階や、製品区分・検査項目が分からない段階でもご相談いただけます。検査依頼フォームへ分かる範囲で情報をご入力ください。製品と目的に合わせて検査内容をご案内します。

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検査のご依頼・お問い合わせ

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