📖

カンナビノイド検査分析関連の用語集

カンナビノイド・ヘンプの検査や分析に関連する用語について解説します。気になる用語の▶︎ ボタンをクリックして解説をご参照ください。
 

ア行

ISO/IEC 17025(アイエスオーアイイーシー)
試験所及び校正機関が正確で信頼性のある結果を出す能力があることを証明するための国際規格です。品質マネジメントシステムの要求事項と、試験・校正手順の妥当性、トレーサビリティ、要員の力量、設備、環境条件など、技術的な要求事項が定められています。この規格の認定を取得することは、分析機関の技術的能力と信頼性を示す重要な指標となります。
詳細については、以下の記事も併せてご参照ください。
 
安定性試験
製品や試料に含まれるカンナビノイドなどの成分が、特定の保存条件(温度、湿度、光など)下で、時間の経過とともにどのように変化するか(分解や濃度低下など)を評価する試験です。製品の有効期間(賞味期限・使用期限)を設定したり、適切な保管方法を決定したりするために不可欠です。
KCAラボが提供している安定性試験については、以下のページより詳細をご確認ください。
 
液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で試料中の成分を分離し、その後タンデム質量分析計(MS/MS)で検出・定量する分析手法です。 HPLCによる分離能力と、MS/MSによる高い選択性・感度を組み合わせることで、複雑な混合物中に含まれる微量なターゲット成分を高精度に分析できます。カンナビノイド分析、特に規制対象となるΔ9-THCなどの低濃度成分の測定に広く用いられます。
 
 

カ行

ガスクロマトグラフィー(GC: Gas Chromatography)
気化しやすい化合物を分離・分析するためのクロマトグラフィーの一種です。試料を気化させ、ヘリウムや窒素などの不活性ガス(キャリアガス)と共に、分離カラムと呼ばれる管に送り込みます。カラム内部の固定相との相互作用の強弱によって成分が分離され、検出器で検出されます。沸点が低く、熱的に安定な化合物の分析に適しており、カンナビノイド分析ではテルペン類の分析や、特定のカンナビノイド(誘導体化が必要な場合あり)の分析に用いられることがあります。
 
カラム
クロマトグラフィーにおいて、実際に成分の分離が行われる管状の部品です。内部にはシリカゲルやポリマーなどの粒子(固定相)が充填されており、移動相(液体または気体)がこの中を流れます。試料中の各成分は、固定相と移動相への親和性の違いによってカラム内を移動する速度が異なり、それによって分離されます。液体クロマトグラフィー用(LCカラム)とガスクロマトグラフィー用(GCカラム)では、構造や材質、充填剤が異なります。
 
カンナビノイド
大麻草に含まれる特有の化学物質群の総称です。100種類以上存在すると言われ、代表的なものにΔ9-THC(テトラヒドロカンナビノール)、CBD(カンナビジオール)、CBG(カンナビゲロール)、CBN(カンナビノール)などがあります。精神作用を持つもの(Δ9-THCなど)と持たないものがあり、地域によって法的な規制対象も異なります。植物由来の「植物性カンナビノイド」の他に、生体内で生成される「内因性カンナビノイド」、化学合成される「合成カンナビノイド」があります。
KCAラボが提供するカンナビノイド検査・分析については、以下より詳細をご確認ください。
 
機器調整
機器調整 (Instrument Adjustment / Tuning): HPLCGCMSなどの分析機器が、最高の性能を発揮し、安定した測定が行えるように、稼働条件(移動相の流量、カラム温度、検出器の電圧、質量分析計のイオン化条件など)を最適化したり、定期的に点検・校正したりすることを指します。キャリブレーション(検量線の作成)も、機器の応答を既知の標準と比較して調整するプロセスの一部と言えます。
キャリブレーション
分析機器の示す値と、既知の濃度や量を持つ標準物質の示す値との関係を決定・調整する作業です。通常、濃度の異なる複数の標準物質を測定し、濃度と測定シグナル(ピーク面積など)の関係を示すグラフ(検量線)を作成します。この検量線を用いて、未知試料の測定シグナルから成分濃度を算出します。正確な定量分析を行うためには不可欠なプロセスです。
 
クロマトグラフィー
混合物を個々の成分に分離・精製・分析するための技術の総称です。「固定相」と呼ばれる物質と、それに対して移動する「移動相」(液体または気体)の二つの相を用います。混合物中の各成分は、これら二つの相に対する親和性や物理化学的性質の違いによって移動速度が異なり、結果として分離されます。代表的な手法に、液体クロマトグラフィー(LC)やガスクロマトグラフィー(GC)があります。
 
クロマトグラム
クロマトグラフィー分析によって得られる結果を図示したものです。通常、横軸に時間(保持時間:成分がカラムを通過するのにかかった時間)、縦軸に検出器の応答強度(濃度に比例するシグナル)をプロットします。分離された各成分は、特定の保持時間に「ピーク」として現れます。ピークの位置から成分の同定を、ピークの面積や高さから成分の定量を行います。
 
検出限界(LOD: Limit of Detection)
分析方法が、試料中に分析対象成分が存在するかどうかを、確実に「検出(存在を識別)」できる最小濃度または量のことです。定量的な精度は問われませんが、成分が存在することを示すシグナルが、ノイズ(バックグラウンド)と統計的に有意に区別できるレベルを指します。LOD未満の場合、「不検出(ND)」と報告されます。定量限界(LOQ)よりも低い濃度になります。
 
合成カンナビノイド
実験室などで化学的に合成された、天然のカンナビノイド(特にΔ9-THC)と類似の構造や作用を持つ化合物の総称です。Δ9-THCよりも強力な作用を持つものや、未知の副作用を持つものもあり、HHCをはじめとして指定薬物として禁止されているものも多いです。
KCAラボでは、合成カンナビノイドの不検出を業界で最も網羅的に検査・分析することが可能です。以下より詳細をご確認ください。
 
高速液体クロマトグラフィー(HPLC: High Performance Liquid Chromatography)
液体クロマトグラフィー(LC)の一種で、高圧ポンプを用いて移動相(液体)を、微細な粒子が充填された高性能なカラムに高速で送り込み、混合物中の成分を効率よく分離・分析する手法です。検出器(UV検出器、ダイオードアレイ検出器、質量分析計など)と組み合わせることで、様々な化合物の定性・定量が可能です。カンナビノイド分析において最も一般的に用いられる主要な分析技術の一つです。
 
 

サ行

植物性カンナビノイド
大麻草によって天然に生合成されるカンナビノイドのことです。「フィトカンナビノイド」とも呼ばれます。代表的なものに、Δ9-THC、CBD、CBG、CBC(カンナビクロメン)、CBN、THCA(テトラヒドロカンナビノール酸)、CBDA(カンナビジオール酸)などがあります。その種類や含有比率は、大麻草の品種や栽培条件によって異なります。
 
試料
分析の対象となる物質や材料のことです。「サンプル」とも呼ばれます。カンナビノイド分析においては、大麻草の花穂や葉、ヘンプ由来のCBDオイル、食品・飲料、化粧品、ベイプリキッド、医薬品、さらには尿や血液などの生体試料まで、多岐にわたります。分析目的に応じて適切な前処理(抽出、精製など)が必要となります。
 
試料調製
試料調製 (Sample Preparation): 分析を行う前に、試料(例: オイル、食品、植物片)を分析機器での測定に適した状態にするための準備・前処理操作全般を指します。これには、目的成分の抽出、不要なマトリクス成分の除去(精製、ろ過)、濃度の変更(希釈、濃縮)、化学的な変換(誘導体化)などが含まれます。試料の種類や分析対象成分、用いる分析機器に応じて最適な調製方法を選択することが、正確な分析結果を得るための鍵となります。
 
新基準・新規制
日本のCBD・カンナビノイド業界においては、2024年12月に施行された改正大麻取締法等によるΔ9-THC 規制値のことを指すことが多いです。世界的に見ても非常に厳しい値が設定されました。詳細については、以下の記事もご参照ください。
 
精度
同じ試料を繰り返し測定したときに、個々の測定値が互いにどれだけ近いか、つまり測定値のばらつきの小ささを示す指標です。「再現性」や「繰り返し性」とも関連します。分析方法や測定プロセス全体の信頼性を評価する上で重要な要素です。「真度(Accuracy、正確さ)」とは区別され、真度は測定値が真の値にどれだけ近いかを示します。
 
選択性
分析方法が、多数の成分が存在する複雑な試料(マトリクス)の中から、目的とする特定の分析対象成分だけを、他の共存成分(妨害物質)の影響を受けずに正確に識別し、測定できる能力のことです。「特異性(Specificity)」とほぼ同義で使われることもあります。選択性が低いと、妨害成分を目的成分と誤って検出・定量してしまい、不正確な結果につながる可能性があります。LC-MS/MSなどの手法は高い選択性を持ちます。
 
 

タ行

第三者検査機関・第三者分析機関
製品の製造業者(第一者)や、その製品の購入者・消費者(第二者)のどちらからも独立した、中立的な立場で分析や試験を行う専門機関のことです。利害関係にとらわれず、客観的かつ公平なデータを提供することを目的としています。カンナビノイド業界においては、製品に含まれるカンナビノイドの種類と濃度、Δ9-THCのような規制対象物質の含有量、残留溶媒、重金属、農薬、微生物汚染などの安全性に関する項目について試験を行い、その結果を分析証明書(COA)として発行します。
ISO/IEC 17025などの国際規格の認定を取得している第三者検査機関による分析結果は、製品の品質と安全性を保証し、消費者の信頼を得る上で非常に重要視されます。その他、最適な第三者検査機関パートナーを選ぶための参考基準を以下の記事にまとめましたのでご参照ください。
 
定量限界(LOQ: Limit of Quantification)
分析方法が、許容される精度と真度をもって、試料中の分析対象成分の量を正確に「定量(数値として報告)」できる最小濃度または量のことです。この値よりも低い濃度の成分は検出される可能性はあっても、その数値を信頼性のある定量値として報告することはできません。通常、検出限界(LOD)よりも高い濃度になります。分析目的に応じて適切なLOQを設定する必要があります。
 
Δ8-THC(デルタエイトティーエイチシー)
Δ9-THC(デルタナインTHC)の異性体(分子式は同じだが構造が異なる化合物)の一つです。天然の大麻草にも微量に含まれますが、主にCBDなどから化学的に変換されて作られることが多いです。Δ9-THCと同様に精神作用を持つとされていますが、その強さはΔ9-THCよりも弱いと言われています。法的な規制は国や地域によって異なり、近年規制対象とする動きが広がっています。
 
Δ9-THC(デルタナインティーエイチシー)
テトラヒドロカンナビノールの最も一般的でよく知られた異性体であり、大麻の主要な精神活性成分です。多幸感、感覚の変化、食欲増進などの作用を引き起こします。日本の大麻取締法をはじめ、多くの国で厳しく規制されている成分です。一方で、医療用途(鎮痛、制吐など)に関する研究も進められています。カンナビノイド分析において最も重要な測定対象の一つです。
日本におけるΔ9-THCに関する規制については、以下より詳細をご確認ください。
 
Δ9-THCA(デルタナインティーエイチシーエー)
Δ9-THCの酸性の前駆体(カルボン酸体)です。生の(加熱されていない)大麻草に主に含まれているのはこのTHCAの形です。THCA自体には精神活性はほとんど無いとされていますが、加熱(喫煙、調理、気化など)や光、時間経過によって脱炭酸反応が起こり、精神活性のあるΔ9-THCに容易に変換されます。そのため、法規制においてはΔ9-THCと合算して評価されることもあります(Total Δ9-THC)。
 
テルペン
多くの植物に含まれる精油成分(芳香成分)であり、特有の香りや風味のもととなる有機化合物群です。大麻草にも豊富に含まれており、ミルセン、リモネン、ピネン、リナロールなどが代表的です。テルペンの種類や組成比が、大麻の品種ごとの特徴的な香りを生み出しています。カンナビノイドとの相互作用によって、その効果を調節する可能性(アントラージュ効果)も示唆されており、近年注目されています。
KCAラボの提供しているテルペン分析については、以下より詳細をご確認ください。
 
Total Δ9-THC(トータルデルタナインティーエイチシー)
試料中に含まれる精神活性を持つ可能性のあるTHCの総量を評価するための指標です。一般的には、試料中に直接存在するΔ9-THCの量と、Δ9-THCA(非精神活性の前駆体)がすべてΔ9-THCに変換されたと仮定した場合の量を合算して計算されます。計算式は通常、Total Δ9-THC = Δ9-THC + (Δ9-THCA × 0.877) となります(0.877はTHCAからTHCへの変換における分子量の補正係数)。法規制の遵守を確認する際に重要な値となります。
 
 

ナ行

濃度
混合物全体に対して、特定の成分がどれくらいの割合で含まれているかを示す尺度です。様々な単位で表され、カンナビノイド分析では主に以下の単位が用いられます。
  • 質量パーセント濃度 (% w/w): 試料全体の質量に対する成分の質量の割合(例: 100g中に1gなら1%)。
  • 質量体積パーセント濃度 (% w/v): 一定体積の溶液中の成分の質量(例: 100mL中に1gなら1%)。
  • ppm (parts per million): 100万分の1の割合(mg/kg や μg/g に相当)。微量成分の表示に用いる。
  • ppb (parts per billion): 10億分の1の割合(μg/kg や ng/g に相当)。さらに微量な成分の表示に用いる。
  • mg/mL: 溶液1mLあたりの成分の質量。質量/体積濃度。
  • mg/g: 固体試料1gあたりの成分の質量。質量濃度。
 

ハ行

バリデーション
特定の分析方法が、その意図された用途(例えば、特定の製品中の特定のカンナビノイド濃度を測定する)に対して、科学的に妥当で信頼性のある結果を一貫して生み出すことを、客観的な証拠に基づいて検証し、文書化するプロセスです。精度、真度(正確さ)、選択性、検出限界(LOD)、定量限界(LOQ)、直線性、範囲、頑健性などの性能特性を評価します。規制当局への申請や、ISO/IEC 17025認定の取得・維持に不可欠です。
 
ピーク
クロマトグラム上で、カラムから溶出してきた特定の成分が検出器によって検出されたことを示す、山形のシグナルのことです。ピークが現れる時間(保持時間)はその成分に固有であり、成分の同定に用いられます。ピークの面積または高さは、その成分の量(濃度)に比例するため、定量計算に用いられます。理想的なピークは、左右対称でシャープな形をしています。
 
ppm(ピーピーエム: parts per million)
ppm(パーツ・パー・ミリオン)は濃度を表す単位の一つで、「100万分の1」という極めて小さな比率を示します。濃度1ppmとは全体の0.0001%に相当し、例えば1リットルの液体中に1mgの成分が含まれる程度の割合です。 カンナビノイド検査では、THCのようにごく微量の成分を表記する際によく用いられます。日本の改正法における規制値では、CBD製品中のΔ9-THC残留限度値の濃度が0.1ppm ~ 10ppmレベルで定められています。改正法に関する詳細は、以下の記事よりご覧ください。
 
標準物質
化学的な組成や特定の特性値(濃度、純度など)が正確にわかっており、十分に均質で安定な物質のことです。分析機器のキャリブレーション(検量線の作成)、測定プロセスの精度管理、分析方法の妥当性確認(バリデーション)、試料中の成分の同定・定量などに用いられます。信頼性の高い分析結果を得るためには、認証された標準物質(Certified Reference Material, CRM)の使用が推奨されます。
 
不検出(ND: Not Detected)
分析試験において、測定対象とした成分が、その分析方法の検出限界(LOD)よりも低い濃度でしか存在しないため、検出されなかったことを示す結果です。これは、その成分が全く存在しない(ゼロである)ことを保証するものではなく、あくまで「用いた分析方法では検出できるレベルには存在しなかった」という意味です。
 
分析証明書(COA: Certificate Of Analysis)
製品の品質や組成に関する分析試験の結果を公式に記載した文書です。通常、製造業者または第三者の独立した分析機関によって発行されます。カンナビノイド製品のCOAには、一般的に以下の情報が含まれます。
  • 製品名、ロット番号、製造日、分析日
  • カンナビノイドプロファイル(CBD, Δ9-THC, CBGなどの種類と濃度)
  • Total Δ9-THC濃度
  • 場合によっては、テルペンプロファイル、残留溶媒、重金属、農薬、微生物などの安全性に関する試験結果
  • 偽造防止のためのQRコード
消費者が製品の品質と安全性を確認したり、規制遵守を確認したりするための重要な書類です。
 
分離
混合物に含まれる複数の成分の中から、目的とする特定の成分、あるいは成分群を、他の不要な成分から物理的または化学的な手法を用いて分ける操作全般を指します。
カンナビノイド分析においては、特にクロマトグラフィーHPLCGCなど)技術を用いて、試料中に共存する多種多様なカンナビノイド(CBD, THC, CBGなど)やテルペン類、その他の化合物を、それぞれの化学的・物理的な性質の違いを利用して互いに分け、個別に検出・定量することを指す場合が多いです。
また、分析前の試料前処理段階で行われる抽出(固体試料から液体へ成分を移す)、精製(夾雑物を取り除く)などの操作も広義の分離に含まれます。適切な分離を行うことは、正確な同定と定量、そして分析全体の精度を高めるために不可欠です。
 
ヘンプ
大麻草のうち、主に産業利用を目的として栽培される品種群の総称です。一般的に、精神活性成分であるΔ9-THCの含有量が極めて低い(多くの国で法定制限値が0.3%や0.2%以下)という特徴があります。繊維(衣類、ロープ、建材)、種子(食品、オイル)、茎(プラスチック代替、動物用敷料)、そして花穂や葉からはCBDなどのカンナビノイドが抽出され、様々な用途に利用されています。産業用大麻とも呼ばれています。
 
 

マ行

MS(マス)
質量分析(Mass Spectrometry)または質量分析計(Mass Spectrometer)の略称です。化合物をイオン化(電荷を持たせる)し、そのイオンの質量と電荷の比(m/z)に基づいて分離・検出する分析技術またはその装置を指します。分子量の決定、分子構造の推定、化合物の同定、そして定量分析に用いられます。クロマトグラフィー(LCやGC)と組み合わせることで、複雑な混合物中の特定成分を高感度・高選択的に分析できます(LC-MS, GC-MS)。
 
MS/MS(マスマス)
タンデム質量分析(Tandem Mass Spectrometry)の呼称です。質量分析計を直列に2つ以上連結した装置、または一つの装置内で質量分離とイオン解離・再分離を多段階で行う分析手法を指します。第1段階のMS(MS1)で特定のイオン(プリカーサーイオン)を選択・分離し、そのイオンを不活性ガスとの衝突などによって解離させ(CID: Collision-Induced Dissociation)、生じた断片イオン(プロダクトイオン)を第2段階のMS(MS2)で分離・検出します。これにより、夾雑物が多い試料中でも目的成分を極めて高い選択性と感度で検出・定量することが可能になります。LC-MS/MSやGC-MS/MSとして、微量分析に強力なツールとなっています。
 
マトリクス
試料中で、分析対象としたい特定の成分以外の、すべての共存物質・構成要素全体を指します。「試料マトリクス」とも呼ばれます。例えば、CBDオイル製品を分析する場合、CBDやTHCなどの分析対象カンナビノイド以外の、キャリアオイル(MCTオイル、ヘンプシードオイルなど)、テルペン、その他の植物成分、添加物などがマトリクスに相当します。マトリクス成分は、分析対象成分の抽出効率や、クロマトグラフィーでの分離、検出器での応答などに影響を与える可能性があり(マトリクス効果)、分析方法の開発やバリデーションにおいて十分に考慮する必要があります。
 
 

ヤ行

溶出
クロマトグラフィーにおいて、カラムの固定相に保持(吸着・分配)されていた成分が、移動相の流れに乗ってカラムから洗い流され、出てくる現象のことです。成分と固定相・移動相との相互作用の強さによって、各成分がカラム内に保持される時間は異なり、その結果、異なる時間に溶出してきます(保持時間の差)。この溶出時間の差を利用して、混合物中の成分を分離します。
 
溶媒
他の物質(溶質)を溶かす性質を持つ液体のことです。カンナビノイド分析においては、様々な目的で使用されます。
  • 抽出溶媒: 試料(植物片、オイル、食品など)からカンナビノイドなどの目的成分を溶かし出すために用いる。(例: エタノール、メタノール、ヘキサン、アセトニトリル)
  • 移動相: 液体クロマトグラフィー(LC)において、試料成分をカラム内で運び、分離を進行させるために用いる液体。(例: メタノール、アセトニトリル、水、緩衝液の混合液)
  • 試料溶解・希釈: 抽出物や標準物質を分析に適した濃度に調整するために用いる。 分析の目的に応じて、適切な極性、溶解性、純度、適合性を持つ溶媒を選択することが重要です。
    •  
 

ラ行

リカバリー率
回収率とも呼ばれます。試料の前処理操作(抽出、精製、濃縮など)や分析プロセス全体を通じて、最初に試料中に存在していた分析対象成分のうち、最終的に測定システムで検出・定量された成分の割合を示す指標です。通常、パーセンテージ(%)で表されます。例えば、リカバリー率が95%であれば、最初の量の5%が前処理段階などで失われたことを意味します。分析操作全体の効率や正確さ、そして分析結果の信頼性を評価するために重要なパラメータであり、分析方法のバリデーションにおいて評価されます。理想的には100%に近い値が望ましいですが、許容範囲は分析対象物やマトリクス、要求される精度によって異なります。
 
 

ワ行

ワックス
カンナビノイド抽出物の一種で、その物理的な形状・質感が、室温で不透明で柔らかい、あるいはやや固めの蝋(ワックス)状であることから名付けられた濃縮物の総称です。通常、ブタンやCO2などの溶媒を用いた抽出プロセスと、その後の精製(ウィンタリゼーションなどによる脱脂・脱蝋)の程度によって、様々なテクスチャー(バター状、クランブル状など)になります。カンナビノイド濃度が高く、テルペン類も豊富に含まれていることが多いです。主に吸入(ベイプなど)用途で利用されます。